2015年御翼1月号その2

影絵画家・藤城清治さん

  

 影絵をカラーにして、イエス様や教会の聖画、そしてメルヘンチックな世界を描く影絵画家・藤城清治さんの美術館が、昨年、那須にオープンした。その作品は、「人生を光と影で映す祈りの芸術」とクリスチャン新聞(二〇一四年十二月十九日号)で紹介されている。
 今年90歳の藤城さんは、大学で経済学部にいたが、趣味が高じて、影絵の世界をライフワークにされたという。「光と影は、人間の生き様というか、ほんとうに人生そのものだと思いますね。影絵の世界は、人々の心に安らぎをあたえてくれる祈りの芸術と言えるかも知れません」と藤城さんは言う。
 慶応義塾大学在学中、学徒出陣で戦地へ。戦後、焼け跡の中、物資が不足していても紙さえあれば作れる影絵で、教会の日曜学校の子どもたちを喜ばせようと、学生たちと影絵劇を始めたことが、この道に入るきっかけだった。「大学の経済学部を出たのに、息子が影絵の世界に進むことに父は大反対でした。ところが、牧師をしていた叔父が、私が影絵の世界に進むことに賛成してくれ励ましてくれたのです。その叔父の依頼で聖書の話も影絵にしたことはありました」(クリスチャン新聞より)
 十四年前の一九八一年、影絵画集『イエス』を出版したころから藤城さんは聖書を題材にした作品を多く作るようになった。神を愛し、人を愛し、自然までも愛する人生に喜びを感じ、それを表現したかったのだ。そして、東日本大震災後、何度も被災地を訪れ、その風景を作品に残している。被災地の現状を描くことに使命感を持っておられるのだ。「被災地の傷ついた風景は、ただ痛ましいのではなく、その向こうにある未来を表現したかったのです」と藤城さんは言う。そして、「がれきは宝石」だという言葉は、「がれきは宝石より輝いている」つまり、苦難の中には、人が霊的に成長して行く宝が隠されているということなのだ。
 被災地を見ても、信仰により希望を持つ藤城さんは、「光と影の世界を通して、人々の心の中に生きる喜びと愛と平和を呼ぶことができれば、こんなにうれしいことはない」と語る。

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